2021年9月19日日曜日

フレーザー河周辺散策           78回トランスリンクの旅       

     今回のトランスリンクの旅、これといった目的もなく、
     ただ単にフレーザ河の周辺を散策、
     天気も予報ではイマイチだったせいか、
     参加者は雅子さん、ミツコさん、幸子さんと私の4人でした。
     
     10時半にSteveston Community Center のパーキング場に集合。
     フレーザー河のそばのパーキング場に移動した時
     散歩をしていた和子さんと及子さんにばったり。
     こんな偶然もあるんですね。
     それで暫く6人で散歩。

       

     仲間が増えたと喜んだのも束の間、
     私たちがノンビリお喋りしたり、写真を撮りながら歩いていたら、
     いつの間にか2人を見失ってしまいました。
 
     フレーザー河の辺りに十数年前から
     コンドーやタウンハウスが沢山建てられていて、
     その敷地の中に初めて入ってみて驚きました。
     中は単に建物が沢山建っているというのではなく、
     そこに住む人々が心地よく、楽しく暮らせるように、
     周辺の自然が巧みに取り入れられていてまるで公園のよう。
     こんな住宅街もあったんですね。
     
       

     タウンハウスやコンドーの中を通り抜けて行くと

       

     こんな素敵な噴水があったり、

       

     チョロチョロ流れる小川にはハスの花が。

                  

     背の高い街路樹が続いていて、なんか森のような感じがしたり。


     どこか南国を思わせる景色があったり。
     次に移り住むのだったらこんな所がいいですね。
     

     フレーザー河沿いを通って。

     ここからは歴史散歩です。


       チャイニーズバンクハウス


     ブリタニアシップヤードは造船所の遺構です。
     

     ここは1908年にカナダに渡ってきた村上音吉さんの家です。
     彼はスティーブストンで漁師、そして船大工として働き、
     10人の子供たちと幸福に暮らしていましたが、
     第二次世界大戦で「敵性外国人」となり、全てを失い、
     内陸部の強制収容所に送られたそうです。
     
村上ハウス


     ランチはベトナム料理。


     とても美味しかったです。


     最後は「ブレンズ」で。


     レストランに向かっている途中で雨が少し降りましたけど、
     帰りは止んでいました。
     今日の天気は目まぐるしく変化し、
     日が射すと暑くなって上着を脱ぎ、
     曇って風が出てくるとまた着ての繰り返し。
     雨が降ったのはほんの僅かな時間。
     私たちにはそれほど影響せず、
     歩くのにはちょうど良いお天気でした。
     走行歩数はなんと14,859歩。ちょっとした記録です。

     幸子さんが作ってくれた動画を見て、
     私たちの楽しかった散歩を一緒に楽しんでください。





2021年9月18日土曜日

マンモスとゾウのハイブリッド作成計画、  米で始動、気候変動対策(NATIONAL GEOGRAPHICより)          

フロリダ州マイアミビーチに展示されているマンモスの骨格の彫刻。
ダミエン・ヒルスト氏作。
    
     米ハーバート大学の遺伝学者ジョージ・チャーチ氏と
     起業家のベン・ラム氏は9月13日、
     「コロッサル」というスタートアップ企業を立ち上げ、
     絶滅したマンモスに似たゾウを
     遺伝子工学で誕生させるという計画を発表した。
     ケナガマンモス(Mammuthus primigenius)のDNAを使って、
     北極圏の気候に適応したアジアゾウ(Elephas maximus)
     とのハイブリッドを作るという。

     後で述べるように、一部の科学者は、
     ハイブリッドゾウが北極圏にある永久凍土の融解を遅らせ、
     気候変動の影響を抑えられると考えている。
     長期的には、ハイブリッドゾウの導入により、
     現在はコケで覆われたツンドラを、
     約250万年前から1万1700年前まで続いた更新世の頃のように
     草が青々と茂った草原地帯に戻すことが目標だ。
     同時にコロッサルは、従来型の保護措置を補う技術など、
     高い収益が見込める新たなバイオテクノロジーの開発を目指す。

     「絶滅危惧種であるアジアゾウと完全に交配できる、
     寒さに強いゾウを作ることが狙いです。
     マンモスそのものではなく、遺伝子を脱絶滅(de-extinction)させるのです」
     と、チャーチ氏は話す。
     バイオテクノロジーを使って絶滅危惧種を保護し、
     さらに絶滅した種さえも復活させようという取り組みは、
     今に始まったことではない。
     2009年に研究者たちは、2000年に絶滅した
     ピレネーアイベックスのクローンの作成に成功した。
     ただし、クローンはわずか数分間しか生きられなかった。

     今年4月、カリフォルニア州を拠点とする非営利団体
     「リバイブ・アンド・リストア」とサンディエゴ動物園は、
     飼育下にある絶滅危惧種クロアシイタチの遺伝的多様性を取り戻すため、
     クローンを作成したと発表した。

     そしてチャーチ氏によるマンモス「復活」計画も、
     以前から世界中の注目を集めていた。
     しかし、近い将来ハイブリッドゾウの誕生が期待できるかというと、
     そういうわけにもいかない。

     コロッサルの計画は、ゾウにおいてまだ実証されていない
     いくつかの技術に頼っているためだ。
     同社の最も野心的な予定表でも、最初のハイブリッドゾウが
     生まれるのは6年後になるだろうと、チャーチ氏は言う。
     そのゾウが自力で繁殖して群れを作るようになるまでには、
     さらに数十年かかる見込みだ。
 
     それでも、現時点においてさえ、
     コロッサルのやろうとしていることは重大な疑問を突き付ける。
     種の絶滅とはどういう意味なのか。
     現在危機的状況にある種の絶滅問題に対して、
     バイオテクノロジーは何ができるのか。そして何をすべきなのか。

     コロッサルの登場で、それはもはや抽象的な話題ではなくなったと、
     大英自然史博物館の生物学者でマンモスを専門とする
     トリ・ヘリッジ氏は話す。
     「真っ先に抱いたのは、本当に現実のものになろうとしているのだ、
     という思いでした」

更新世パーク」の未来予想図。
マンモスなど氷河時代の大型草食動物とシベリアのステップ地帯は、
持ちつ持たれつの関係にあったと生態学者のセルゲイ・ジモフは考える。
動物は草を食べるが、その糞が土を肥やし、
ひづめで地面を耕していたおかげで、草原が維持されていたという

「更新世パーク」へようこそ

     チャーチ氏が初めてハイブリッドマンモスへの思いを深めたのは、
     2008年、ケナガマンモスのゲノム解析について
     ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューを受けた時だった。

     その後、リバイブ・アンド・リストアを創立した
     スチュアート・ブランド氏とライアン・フィラン氏に出会い、
     協力するようになる。
     ブランド氏とフィラン氏は、
     バイオテクノロジーを使って絶滅危惧種の数を増やし、
     さらに絶滅してしまった種を復活させるという研究に取り組んでいた。

     「脱絶滅、そして私たちが遺伝子レスキューと呼ぶ概念は、
     希望の物語であり、数百年間にわたって人間が与えてきた
     損害の一部を修復できるということです。
     ノスタルジアではなく、生物多様性を拡大させることなのです」と、
     フィラン氏は話す。
     チャーチ氏は、ブランド氏とフィラン氏の招きで、
     2012年と2013年に米ワシントンD.C.のナショナル ジオグラフィック
     協会本部で開催された世界初の脱絶滅に関する会議に参加した。

     その席でチャーチ氏は、ロシアの生態学者で、
     ロシア連邦サハ共和国の町チェルスキーにある
     北東科学基地所長のセルゲイ・ジモフ氏に出会う。
     1980年代からシベリアの永久凍土を研究しているジモフ氏は、
     その融解に伴って大量のメタンと
     二酸化炭素が大気中に放出されるだろうと警鐘を鳴らしてきた。

     しかし同時に、その炭素をどうやって地中に留めておくかについて、
     ジモフ氏はあるアイデアを持っていた。
     それを検証するため、1996年に息子のニキータ氏とともに、
     チェルスキーに近いツンドラの土地に、
     フェンスで囲った「更新世パーク」を開設した。
     そこへ、シカ、バイソン、トナカイ、フタコブラクダなど
     大型の草食動物を導入して、動物たちが大地へ与える影響を調べている。

ロシア北部に作られた現在の「更新世パーク」。
湖と湖の間を縫うようにして、緑豊かな自然が広がっている。

     数万年前の更新世の頃、ヨーロッパ、アジア、北米大陸の大部分は、
     肥沃な草原に覆われ、多様な草食動物が所狭しと歩き回っていた。
     ところが1万年前には、おそらく狩りなどの人間による影響もあり、
     世界各地でマンモスを含む多くの大型草食動物が絶滅する。
     草を食べることで草原の環境を維持していた動物たちがいなくなると、
     灌木や背の高い樹木、コケが生え始め、緑豊かだった草原は
     現代のようなツンドラやタイガに取って代わられた。

     肥沃な草原を維持するためには、マンモスが欠かせなかったのではと、
     ジモフ氏は考えている。
     巨大な体で木を倒し、土を掘り返し、排泄物で栄養を与え、
     草の成長を助けた。
     さらに、重い足で雪と氷の大地を踏みしめ、
     北極圏の冷たい空気を永久凍土の奥深くまで押し込んでいたのだろう。

     更新世パークにはマンモスはいないが、
     フェンスの中に現在放されている草食動物たちが、
     既に大地の再生に貢献している可能性がある。
     2020年3月に学術誌「Scientific Reports」に発表された
     ジモフ氏らの論文によると、
     冬の間、更新世パークの踏み固められた土は、
     公園の外の土と比べて温度が6℃以上低くなる可能性が示された。

積み重なる技術的な課題

     コロッサルの最終目的は、十分な数のカギとなる遺伝子を操作して、
     マンモスのように北極圏の寒さに適応する「代用」種のゾウを
     アジアゾウから作ることだ。

     ケナガマンモスとアジアゾウが別の種に分かれたのは600万年前だが、
     大英自然史博物館のヘリッジ氏によると、
     2種のDNAは99.9%以上同じだという。
     だが、ゾウのゲノムだけでも30億塩基対もの長さがあるため、
     わずか0.1%以下といってもその違いは膨大な数に上る。
     科学者たちは、操作すべき遺伝子を
     そのなかから探し出さなければならない。

     現在コロッサルのチームは、
     脂肪の蓄積、寒い環境で酸素を維持する血液の機能、
     マンモスのトレードマークである厚い毛皮に関わる遺伝子など、
     60個以上の遺伝子に着目している。

     また、マンモスの遺伝子をアジアゾウのDNAに挿入するときには、
     多くの遺伝子を一度に改変する必要がある。
     この点に関してチャーチ氏の研究室では、
     別の動物を使って研究を重ねてきた。
     これまでに、ブタの臓器を人間への移植に利用するため、
     「クリスパー・キャス9(CRISPER-Cas9)」と呼ばれる
     遺伝子編集技術を使って、
     ブタのゲノムを数十カ所一度に改変することに成功している。

     最大の懸念は、そうやって作った受精後まもない胚をどう育てるかだ。
     アジアゾウは絶滅危惧種であるため、
     コロッサルは代理母を使わず、人工子宮の開発を検討している。

     ヒツジを使った過去の実験では、
     人工子宮で4週間まで胎児を維持させることに成功している。
     マウスでは、5日目まで発達した胚を6日間維持できることも示された。
     しかし、どんな哺乳類でも胎児を臨月まで人工子宮で育てた例はない。

     コロッサルは、それを世界で初めて現生のゾウでやり遂げようとしている。
     ゾウの妊娠期間は2年近くにも及び、
     生まれてくるゾウの体重は90キロ以上ある。

倫理的な問題も山積み

     動物を使った実験は何であれ、倫理的問題に直面する。
     しかも、ゾウは寿命が長く、高い知能を有し、
     複雑で数世代にわたる母系社会を形成している。

     古代のマンモスに関する研究では、マンモスにも
     ゾウとよく似た社会的特徴があったことが示されている。
     では、初めて誕生するマンモスとゾウのハイブリッドは、
     どのように扱い、交流させればよいのだろうか。
     将来形成されるであろうハイブリッドの群れは、
     北極圏でどのようにして生きることを学び、
     マンモスのような自分たちの文化を一から作れるというのだろうか。

     コロッサルとジモフ氏は、
     もしハイブリッドゾウが誕生したあかつきには、
     更新世パークでその何頭かを受け入れるという
     非公式の約束を交わしている。
     現在は20平方キロの狭いパークだが、
     いずれは144平方キロまで拡大する予定になっている。

     また、コロッサルのビジョンを完全に実現させるとなると、
     広大な北極圏のツンドラをゾウが暮らせる場所に戻さなければ、
     世界の気候に影響を与えるまでには至らないだろう。

     しかしそのためには、土地使用の問題、既存の野生生物への影響、
     世界的なガバナンス、そしてロシアの北極圏に暮らす
     およそ18万人の北方先住民への影響など、
     検討すべきことは山のようにある。


2021年9月9日木曜日

各国都市で増えるミニ森林・ 宮脇方式    世界に浸透(NATIONAL GEOGRAPHICより)

オランダに作られたミニ森林。同様の森林作りは世界中に広がりつつある。

     ある暖かい2021年6月の午後、オランダの町ユトレヒトでは、
     ニレとヤナギの茂みでカササギが鳴き、葉の上を甲虫がはっていた。
     すぐ隣には18階建てのビルが建ち、電車の線路が走っている。
     ここは、「ムジークプレイン(音楽の広場)」と
     名付けられた小さな人工森林だ。
     広さは、近くにあるバスケットボールコートとさほど変わらない。
     18年に木が植えられる前は駐車場だった。

     同じような「ミニ森林」は、オランダ全土で144カ所に作られ、
     ユトレヒトだけでも7カ所にある。
     同国のミニ森林計画を率いる団体
     「IVNネイチャー・エデュケーション」によると、
     21年末までにその数は200カ所に増える予定だという。

     小さな土地を活用してできるミニ森林プロジェクトは、
     日本の植物学者である宮脇昭氏の活動を下地としている。
     宮脇氏は、土地本来の若木を、間隔を詰めて植樹し、
     荒廃した土地に短期間で森林を再生させる方法を考案し、
     1970年代から各地で植樹活動を行った。
     氏は日本の植生を広く研究、分類し、
     ミニ森林を作りたい場所の近くの森を調査して、
     その森を構成している主な樹木種を何種類も混ぜ合わせて植樹する。
     06年、旭硝子財団のブループラネット賞を受賞した際の論文で、
     宮脇氏は次のように書いている。
     「その土地に本来生えている樹木を中心に植樹し、
     自然の森の法則に従うこと」

日本の鎮守の森

    (*)ミニ森林とは日本に昔からある鎮守の森をモデルにしたもので、
     その土地に本来ある樹木を中心に様々な植物を混ぜて植樹すると、
     10倍の速さで成長し、30倍の密度になり、
     100倍の生物多様性をもたらす効果があるそうです。

宮脇昭さん

     日本の場合、照葉樹林が本来の姿で、
     松、杉などの林は木材を得るための人工林です。
     人工林は手入れをしないと維持、存続が出来ないもので、
     自然災害に弱いのだそうです。

     宮脇氏の協力者である藤原一繪(かずえ)氏によると、
     密接して植えられた若木は互いに競うようにして太陽の光を求めるため、
     短期間で成長する。
     この方式は、1メートルしか幅がない狭い場所でも導入できるが、
     複数の種を混ぜて植樹するには最低3メートルの幅が
     あった方がいいという。
     
     宮脇方式は、インドのトヨタの工場でエンジニアとして働いていた
     シュベンドゥ・シャルマ氏によっても広められた。
     09年に、シャルマ氏が勤務する工場に
     宮脇氏のミニ森林が作られたのがきっかけだった。
     
     森林の成長ぶりに驚いたシャルマ氏は、起業してさらに研究を重ね、
     自宅の裏庭に同じような森を作った。
     14年にはオンライン講演会「TED ドーク」に出演し、
     誰でも土地本来の植生を利用したミニ森林作りが学べるように、
     独自の説明書を作成した。

ベルギーのミニ森林
  
     ベルギーで2016年に宮脇方式の森づくりを始めた。
     ボランティアや地元の有識者をまとめ上げ、
     300本の苗木を道路そばの細い草地に植えた。
     その時初めて植えた木々は今や高さ3メートルの森に成長し、
     林床は腐食土に厚く覆われている。

     それ以来、この考え方は世界中で人気を獲得し、
     シャルマ氏の会社「アフォレスト」は
     インドを中心に世界の44の都市で森作りを支援してきた。
     ベルギー、フランス、英国にも同様の森林が作られ、
     アシアではインドやパキスタンで、
     都市部における宮脇式植樹計画が進行中だ。

15年オランダのザーンダムに植樹されたばかりのミニ森林

     個人向けのキットも開発
    
     シャルマ氏指導の下、IVN は15年に
     オランダ初のミニ森林をザーンスタットの町に作り、
     独自のハンドブックを公開した。
     まず、近くに生えている樹木を調べ、その土地本来の種は何かを選定する。
     オランダには、ブナ、オーク、カバノキ、のほか
     セイヨウカンボクやハシバミなどの低木が自生している。
     IVN 創立者のダン・ブライヒロット氏によると、
     通常は20−40種の木や低木の苗を
     1平方メートル当たり3本ずつ植えるという。

     IVN は地元の学校、住民、自治体と協力して、
     各地でミニ森林を作る公共プロジェクトを進めている。
     使用する面積は、大体テニスコート一面分の200ー250平方メートルだ。
     土地はどんな形でも構わないが、IVN のハンドブックでは、
     少なくとも4メートルの幅が必要とされている。
     費用は、森林で自然教育を行う教師の訓練も含めて、
     平均2万−2万2000ユーロ(約260万円ー290万円)かかり、
     IVN と自治体がこれを折半する。

     個人の場合はそれよりも安く、3000ユーロ(約40万円)
     以下で自分の所有する小さな土地にミニ森林を作ることが出来る。
     ブライヒロット氏によると、現在オランダには
     約60ヶ所の裏庭にミニ森林があるそうだ。
     さらに狭い土地しかないという人のために、
     19年には6平方メートルで出来る超ミニ森林キットを開発した。
     オンラインで124,95ユーロ(約1万6.500円)で注文出来る。

     ユトレヒト市の緑化計画の上級顧問を務めるイエロン・シェンケル氏は、
     自然の力を利用して都市部の熱波の影響をやわらげ、
     土壌の保水力を向上できるとして、ミニ森林に期待を寄せている。
     
17年に撮影された同じザーンダムのミニ森林

     豊かな生物多様性

     オランダのワーへニンゲン大学の研究者が
     21年4月に発表したデータによれば、
     ミニ森林には様々な動植物が集まってきていることがわかる。
     ボランティアが11ヶ所のミニ森林を調査したところ、
     動物は636種、植物は最初に植えられた種以外に298種が観察された。
     森林管理としては、時折しつこい雑草をぬくほかは、
     ほとんどの場合、野草など新しい植物が生えてきても
     そのままにしておくと、ブライヒロット氏は言う、、、。

     世界自然保護基金(WWF) は20年、
     オランダに生息する野生生物の個体数が過去30年間で
     半分に減少したという報告書を発表した。
     中でもチョウ、鳥類、爬虫(はちゅう)類が深刻な打撃を受けている。
     だが、WWF でオランダ森林部門長を務めるスザン・バルクマン氏は、
     小さなプロジェクトでも都市部で
     生物多様性を広げることは可能であることを、
     ミニ森林のデータは示していると話す。 

     CO2の吸収・固定も

     二酸化炭素(CO2) の吸収固定に関しては、このミニ森林方式は、
     オランダでの他の形態による森林再生プロジェクトと同等の効果が
     あるという暫定的なデータが出されている。
     ワーへニンゲン大学の研究で、ミニ森林は20年に平均して
     約127,5キログラムのCO2 を固定していたことが明らかになった。
     この割合は同じくオランダにある別の10年未満のより
     広い森林とほぼ同じだ。

     ミニ森林だけを比べてみると、場所によって固定量にばらつきがある。
     最も古い森林の一つであるザーンスタットの森林は、
     面積が245,7平方メートルで、20年の固定量は631,2キログラムだった。
     一方、アルメレという町に18年に作られた新しいミニ森林は、
     面積が231,6平方メートルで、
     固定したCO2 の量はわずか4,3キログラムだった。
     だが、この場所では何者かによって樹木が傷つけられたため、
     固定量が減った可能性があるという。

     この他、別の場所での同じ樹木種による炭素固定量を含む研究を基に、
     平均250平方メートルの森林が成長した場合、年間250キログラムの
     CO2 を固定するようになるという予測結果が出されている。
     この数字はオランダにある10−50年程度の年齢の森林の平均的固定量と
     ほとんど変わりがない。
     ワーへニンゲン大学による20年の研究では、
     10−50年程度の年齢の森林において、
     ミニ森林と同等の面積の場合に固定出来るCO2 の量は
     年間227,8キログラムとされている。

17年に、年間を通してミニ森林の観察を行った結果、
生物多様性が豊かになっていることが明らかになった

     ブライヒロット氏は、興味深い数値であるとしながらも、
     小さな土地の森林だけで気候変動を解決することは出来ないと指摘する。
     炭素排出量を削減することだけが、気候変動の唯一の解決法なのだ。

     「このプロジェクトの主な目的は、人々と自然を結びつけることです。
     炭素固定も出来るなら素晴らしいですが、
     これに関して私たちは目標を設定しません」

     英オックスフォード大学の「自然に根ざした解決策イニシアチブ」
     に参加するセシル・ジラルディン氏は、5月12日付で
     学術誌「ネイチャー」に発表した論文で、
     55年に地球の平均気温が工業化以前よりも1,5度上昇すると仮定して、
     自然に根差した解決策は一定の効果はあるものの、
     経済の脱炭素化にとって代わるものではないと、ジラルディン氏は言う。
     ミニ森林は、炭素固定の側面から評価するのではなく、
     都市部の気温を下げ、土壌の保水力を改善させ、
     生物多様性をもたらすという点に注目した方がいいという。

     土地本来の樹木は、その土地の環境に適している。
     それを選んで植えることによって、長期生存可能な生態系を作る事が出来る。
     だが、ミニ森林を作るために自然の草地を削ったり、
     公共の庭園を撤去するようなことは避けるべきだと
     ジラルディン氏は言う。
     そして、プロジェクトは森林に限らず、例えば自然な草地を
     そのまま保存することなどを検討しても良いのではと、同氏は提案する。
     「ミニ森林と呼ぶのではなく、ミニ生態系と読んだらどうでしょう」

     (文 ELIZABETH HEWITT、訳 ルーバー荒井ハンナ、
     日経ナショナル ジオグラフィック社)
     [ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年6月25日付]
     紫の部分は私が調べて入れました。

2021年9月4日土曜日

クラインガルテンとダーチャ        (佳子さん、紀夫さんのお話から)

佳子さんと紀夫さん(雑誌畑道楽から)

     先日佳子さんと紀夫さんのお宅に伺って、
     カナダに来る少し前まで小さな家付きの畑を借りて、
     週末ファーマーをしていたというお話を伺いました。

     お二人が借りていたのは
     私には初耳の「クラインガルテン」と言う滞在型市民農園で、
     これはドイツが発祥地だそうです。
     「クラインガルテン」は市民を守る小さな砦、
     「黒い森」は都市を守る大きな砦として、
     環境を守る市民運動がクラインガルテン法を作り、
     クラインガルテン協会を作り発展してきたのだとか。

     日本でも非農家が増えその荒れ果てた広い農地を活用するため
     今では全国津々浦々にこの「クラインガルテン」が出来ていて、
     お二人はその一つで茨城にある
     「笠間クラインガルテン」を5年間借りたそうです。
     そのお二人の様子の一端が雑誌「畑道楽」に掲載されているのを
     見せていただきました。
     
お二人が’借りていた笠間クラインガルテン


     ここでは農機具も全て貸してもらえるし、
     使い方も教えてもらうので困ることは何もなかったそうです。
     無農薬のため虫にやられてしまうこともあったけど、
     隣近所の先輩達からのアドバイスが随分役に立ったとか。

     「同じ、野菜作りが趣味の週末ファーマー同士だから話も合うし、
     ここではすぐに友人が増えていきます。
     夜はみんなで酒盛りをやったり、
     畑仕事の合間に近くのゴルフ場に出かけたりして」
     朝は全員で体操したり、女性同士おしゃべりに興じたり、
     とても楽しかったとおっしゃっていました。

     ここで知り合った仲間達と一緒に、
     近隣の農家から畑を借りて共同農場も作るほど
     畑仕事にハマってしまったそうです。

     お二人の話を聞いているうちにロシアの「ダーチャ」
     に似ていると思いました。
     「ダーチャ」とはクラインガルテンと同様、都市に暮らす人々が、
     初夏から秋までの週末を過ごす菜園付きのセカンドハウスのことです。

トルストイのダーチャ
チェーホフのダーチャ

     トルストイやチェーホフといった帝政時代の作家の文学にも
     「ダーチャ」は登場しますが、
     当初は、貴族や豪商などの富裕層が田舎暮らしを楽しむ、
     別荘的な存在だったんです。

一般市民のダーチャ

     ロシア帝国が崩壊して旧ソビエト連邦(1925〜1991)となり、
     経済が崩壊して人々は食べるものにも事欠いていました。
     1960年代になってやっとフルシチョフ政権が
     一家族に最低600平米の土地を与えると言う法律を作り
     現在は国民の60%がダーチャを所有しているそうです。
     ダーチャの場合与えられるのは土地だけで、
     建物や畑は自分たちで整備。
     インフラも全てが整っているわけではありません。
     そこに小屋を建て、畑を耕し、食べるために野菜作りをし、
     長い冬を生きぬくために保存食を仕込み、加工してきたのです。

     またソ連が崩壊する直前やロシアが発足してまもない頃は
     ロシア国民は食糧の調達がままならず、
     ダーチャは彼らが自活するためのまさに生命線となったのです。
     ダーチャのおかげで戦争や飢えから身を守り
     さらにロシア全体の自給率も支えてきたほど。
     これがロシアの知られざる力となっているそうです。

     自分たちで作らないとなんともならないという危機感とともに、
     おばあさんやおじいさんが子供達と一緒に家庭菜園や料理などを行い、
     家族間のコミュニケーションを育むという
     楽しい要素もダーチャにはあります。
     その楽しい要素が、ダーチャという自給自足の生活様式が
     今も伝統として生き残っている理由なのでしょうね。

     趣味として畑仕事を楽しむというクラインガルテンと違って、
     ダーチャには生存を賭けた厳しい歴史がありますが、
     生活が豊かになった今は、両方とも定年を迎える、
     または迎えた人たちにとって、
     老後を素晴らしいものにする制度になっていると思います。
     またパンデミック以後の不確かな世界には
     必要不可欠なものになるような予感がします。