「気温50度」のシナリオも、熱波に備えた都市設計の必要性を専門家が警告
熱波や高温の専門家らは、現在直面している記録的な暑さだけでなく、今後の
熱波についても対策を立て始める必要があると警告している。
国連人間居住計画と大西洋評議会のアドリアン・アーシュト/ロックフェラー
財団レジリエンスセンターの「最高熱波責任者」であるエレニ・ミリビリは
インタビューで、都市部は他の地域の平均の2倍の速さで暑くなっており、
「地球温暖化の中心点」になっていると語った。
ミリビリは、都市計画に携わる人は現在世界中で記録が塗り替えられている
気温だけでなく、さらに暑くなる可能性のある来るべき熱波に備えた都市設計
を始める必要があるとも指摘した。
「問題を深刻にとらえているフランスの首都パリが現在、気温50度という設定
を含むシナリオで都市設計を練っているのは非常に示唆的だ」
「5年前にはこのような計画は考えられなかっただろうが、さらに暑くなってい
る未来を想定した設計を今始めなければならない。というのも、もはや今後暑く
なるかどうかわからないという話ではないからだ」とミリビリは続けた。
ミリビリのコメントは、欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動
サービス」が新しいデータを発表した際のものだ。発表されたデータによると、
6月の世界の気温は産業革命前の水準を1.5度上回った。これは12カ月連続だ。
欧州の6月の平均気温は1991~2020年の平均気温を1.57度上回り、史上2番目
(タイ)に暑い6月となった。
エンジニアリングと持続可能性のコンサルタント会社Arup(アラップ)の自然
再興部門を率いるディマ・ゾゲイブがインタビューで語ったところによると、
同社は人工知能(AI)とコンピュータ上の熱モデリングツールを使って世界中
の都市の暑さの問題を研究している。
調査で英ロンドンの最も暑い地域の気温は、近隣の緑豊かな地域よりも8度も高
いことがわかったとゾゲイブは明らかにした。
アラップはこれらのツールを用いて地区や都市規模での設計が気温にどのよう
に影響するかも測定している。
同社の研究者がアラブ首長国連邦で調査したところ、日差しを遮る覆いや樹木、
透水性の表面などの対策を導入した地区の気温は10度も下がることがわかった。
最も危険なのは夜間の高温、高い死亡率や罹患率につながる
「この研究は、遮光や緑化、オープンスペース、樹木が都市の気温を下げるの
に大きく貢献することを如実に示している」とゾゲイブは筆者に語った。
都市は伝統的に地理的な位置やその地域の気候条件に合わせて設計されてきた
とミリビリは指摘する。
コンクリートや鉄、アスファルトなど、今日建築に使われている材料の多くは、
日中に熱を吸収し、夜ゆっくりと熱を放出する。夜間に気温が高いままなのは
このためだとミリビリは説明する。
そして、最も危険なのはそうした夜間の高温で、これが高い死亡率や罹患率に
つながるという。
ミリビリはまた、多くの都市に「自然がない」ことも、都市の気温上昇を助長
していると指摘し、医学誌ランセットに2023年に掲載された研究にも言及した。
この研究では、欧州の都市で樹木被覆率を30%まで高めることで、暑さに関連
する死を3分の1減らすことができると論じた。
「都市に緑地を増やし透水性の表面を増やすことは、暑さ対策に複数のメリット
をもたらす」とミリビリはいう。「暑さは人命を脅かす。緑豊かな都市を作り
始めれば、今以上に美しくて住みやすく、そして理にかなった都市になる。
なぜなら緑豊かな公共空間では、誰もが休憩してリラックスできるからだ」
ゾゲイブは、タンザニアのダルエスサラームでのアラップの取り組みに言及した。
同社はデジタル技術を使って2050年までの都市の成長をモデル化し、都市の高温
と洪水に対処するための将来の計画に自然を用いたソリューションを組み込んだ。
このプロジェクトでは、気温を最大5度下げることができ、オリンピックで使用
される大きさのプール300杯分の雨を土壌に蓄えることができることを実証した。
「洪水や都市の高温、緑地といった問題は解決できる。都市を構成するあらゆる
要素について考え、そうした要素が住みやすく、回復力のある場所づくりにどの
ように貢献しているのかを理解する絶好の機会だ」とゾゲイブは話した。
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