2025年5月17日土曜日

映画「モンパルナスの灯」を観て      第7回映画とおやつの会


  今月の映画は1958年に公開されたジャック・ベケル監督、
 ジェラール・フィリップ主演の「モンパルナスの灯」です。

 参加者12名 
 
 

 いつものようにおやつが凄い!ケーキあり、巻き寿司、アップパイ
 フルーツ、お菓子、私の作ったぜんざいなどがあって、食べきれない
 くらいでした。
 今回の映画は私の好きな画家モディリアーニの亡くなる数年間の
 エピソードを集めた物語ですが、この映画の冒頭で
 「脚本家はこの映画が歴史的な作品であるとは主張していません」
 と述べています。
 上の写真が冒頭のシーン。モディリアーニが描いた似顔絵を彼につっ
 かえす客。怒りで受け取った絵を破き、お金を受け取らず店を出て
 行く彼を、画商のモレルが冷たい目で見ているところから始まりま
 す。
 最後の方のシーンはお金を稼ぐために、病みつかれた体でバーにいる
 お客に絵を売り歩くのですが、ほとんどの客は絵に無関心。
 その絵を彼が一度花を買ったことがある花売りのおばさんが、買って
 くれる......でも彼女は絵が好きなわけではなかったのです。
 お金を払いながら「絵は素敵だけどいらないわ」と一言。
 この言葉がどんなに残酷だったか。「あ、それ言っちゃダメ」って
 観ている私でさえ心の中で叫んでしまいました。
 彼の自尊心、生きる力を奪う言葉の暴力。「絵」を自分の魂そのもの
 と考える画家と絵に関心のないおばさんとの心のすれ違いが、見事に
 このシーンで表現されていました。
 そしてその場の光景を見、フラフラ出て行く彼の後を追う画商の
 モレル。まるで死神のようです。彼はモディリアーニの絵を売る為に
 彼が死んでくれるのを待っているのですから。

 
 モディリアーニが亡くなったことを確かめるや否や、妻のジャンヌの
 元に駆けつけ、モディリアーニの死を知らせず絵を買いまくる画商の
 モリス。何も知らないジャンヌがやっと絵の価値が認められたと大喜
 びするところで終わり。喜ぶ彼女の笑顔が素敵すぎるだけに、
 「むごすぎるー」って叫びたくなるようなシーンでした。
 この悪徳画商モレルは実在の人物ではないのですが、リノ・バンチェ
 ラが演ずる画商の存在感が凄く、物語の効果を高めていましたね。

モディリアーニとジャンヌ
 映画の冒頭でこんなことも書いてありました。
 今日世界中のすべての美術館とモディリアーニの偉大なコレクターは
 彼の絵画それぞれに数千万ドルの価値があると考えています。
 1919年に彼が生きていた時は誰も彼の絵を欲しがらなかったのに。
 「モディ」は誤解され、無力になり、自分自身を疑った.......」と。

 そして妻のジャンヌは彼の死の2日後に1歳の娘を置いて妊娠8ヶ月
 の身で自殺してしまった。彼女はまだ21歳だったそう

左が自画像、右はモディリアーニ

 上の4つの絵は彼女の絵で、彼女自身才能のある画家で現在でも
 展覧会が開かれているそうです。

主演のジェラール・フィリップとアヌク・エーメ

 この映画でジェラール・フィリップの演技の素晴らしさ!
 あのジャン・コクトーを始め、多くの人が驚嘆したという
 演技者としての実力を見せてもらいました。
 そして彼の比類なき美しさも思う存分楽しませてもらいました(笑)
 彼がこの映画の翌年モディリアーニと同じ36歳で、肝臓癌で亡く
 なってしまったことを考えると、なんか因縁めいていますね。
 そしてこの映画の撮影中、身体的に大変だったろうと同情して
 しまいます。
 様々な役割を演じてきた彼をこれからも見ていきたいな。

 最後に付け加えたいのがこの映画のバックミュージックについて。
 ポール・ミスラキの作曲で、この物語に本当に溶け込んでいて、
 ついつい聞きそびれることがあるのですが、とても素敵で効果
 的です。映画をまた見る機会があったら、音楽の方にも耳をか
 たむけてください。



 

2 件のコメント:

  1. 映画の会、エイジさんが解説して下さるので、大変分かりやすく楽しみました。

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  2. 長谷川和子2025年5月26日 19:03


    ”モンパルナスの灯”の説明を読んだだけでも泣けてきます。
    死後報われてもねェ,,,せめて少し幸せを味わってもらいたいですね。
    今もそうなのか分かりませんが、一生懸命もがいても絶望しかないなんて悲しすぎますね。
    昔の映画って本当にバックミュージック素敵な曲が沢山ありますね。

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