2024年8月14日水曜日

古代ペルシャの知恵を借りた気候対策!

カルトゥ➖ヤ・カナート パイロット プロジェクトの水道橋

   2022 年の夏、イギリスのロンドンでは、猛暑により鉄道の線路や空港の滑走路
   が溶けました。2023 年 7月、ドイツ人はうだるような暑さから逃れるために
   昼寝を検討し始めました。


   スペイン南部の都市セビリアでも2年越しで気温が 40 度を超え、その熱波は
   非常に強烈で、耐えられないほどだったそうです。
   そのためセビリヤの小さな研究グループは、エアコンを使わずに、涼しく
   するにはどうしたら良いかを模索し始めた結果、大昔に暑さとともに生きる
   ことを学んだ古代中東文化からインスピレーションを得て、カナートに目を
   つけたのです。
   
   「人間と自然の特別な関係」
   マジド・ラバフ・カネイキ氏は、3,000年前の地下水路技術「カナート」を現代
   に持ち込むのに尽力している数少ない専門家の1人です。

   つるはしとシャベルを使って手作業で建設された初期のカナートトンネルは、
   中国、オマーン、アラブ首長国連邦、アフガニスタンに出現しました。
   しかし、学者たちは、最初のカナートは1千年紀初頭にペルシャで生まれ、
   その後世界中の乾燥地帯に広がったと推定しています。

   この古代のシステムは、砂漠の地表から20~200メートル下にある地下水路
   のネットワークで構成されており、高所から低所へ水を輸送。
   わずかな傾斜地に建設された水路は、重力を利用して水を輸送。
   井戸のような一連の垂直シャフトにより、アクセスとメンテナンスが可能に
   なっています。


   上から見ると、このシステムは砂漠に曲がりくねって並んだ何千もの蟻塚の
   ように見えます。本当にすごいのは、水が運河を通って流れる前に地下で
   集められていることです。


   上の二つの写真は私が幸子さんたちと一緒にモロッコを旅行した時、タクシーで
   ワルザザートに着く前に見学したカナート(モロッコではジョフル)です。
   確かあの時はトゥアレグの人たちが管理していました。
   サハラ砂漠の下に水量豊かな地下水があるなんて想像もしていませんでした。


   イランのケルマーン近郊のシャフィアバード村にあるカナート(地下水路)。
   イランでは紀元前1千年紀からカナートが水供給に使われてきたそうです。

   古代のカナートシステムは砂漠地帯での灌漑を可能にし、農業の繁栄を促し、
   コミュニティの協力を促進しました。このシステムは現代のダムよりも
   持続可能であり、気候変動対策のための一つの解決策にもなっているようです。

   古いものを新しくする方法
   中東の乾燥地帯から数千キロ、中国からはさらに遠く離れた場所で、科学者の
   ホセ・サンチェス・ラモスとセルバンド・アルバレスがカナートの概念を利用
   してスペインのセビリア市にオアシスを作り出しています。

   気温上昇の解決策を見つける市の取り組みの一環として、ラモスと
   アルバレスは、エネルギーを大量に消費する技術に頼らずに屋外スペースの
   温度を下げる実験を行う場所を選択する機会を与えられました。

   その選択肢の 1 つは、セビリア中心部の北西にある
   ラ・イスラ・デ・ラ・カルトゥーハ地区でした。この地区はかつて 1992 年の
   セビリア博覧会の会場であり、4,100 万人の来場者を集めました。
   市は、このスペースを都市化するためのいくつかの試みを行ってきましたが、
   現在では、生い茂った低木、ひび割れた歩道、老朽化し​​たモノレール駅など、
   ほとんどが放棄されたような土地になっているそうです。

   しかし、この地域には 15,000 人を雇用する研究開発施設、サッカースタジアム、
   アンダルシア国際大学 (UNIA) があり、万博で使われていたが今は廃墟のように
   なった円形劇場が、ラモスとアルバレスの仕事の中心地となっています。

カルトゥーヤ・カナート パイロット プロジェクトの講堂

   CartujaQanat と名付けられたこのプロジェクトは、ペルシャのカナート システム
   をモデルにしており、ラ・ イスラ・ デ ラ・ カルトゥハ内のサッカー場 2 つ分
   の広さの空間の地表温度を 6 ~ 7 度下げることを目指しています。

カルトゥーヤ・カナート
   
   カルトゥーヤ・カナートでは、地下20メートルの深さに格子状に水道管が
   引かれています。水路の水は循環しており、夜間に地下のタンクで冷やされ、
   昼間にはソーラーパネルの電気ポンプで押し出されます。
   冷たい水が日中にパイプを通ることで、その周囲の空気は冷やされ、その空気
   をファンを使って建物の中に送っています。
   屋外では、冷たい水がミスト状に放出され、気温を下げてくれるのです。

   この構造は大規模ですが、運用にかかるエネルギー量は、化石燃料を燃やして
   エアコンを使い続けるより少ないそうです。このプロジェクトは実験的なもの
   で、欧州連合(EU)の資金を得て、500万ユーロ(約8億6000万円)の予算を
   かけて作られました。
   

   他にも気温を下げるために内壁に木が植えられています。。その木の
   蒸散作用(葉から出る余分な水分が空気中に蒸発する)によって気温を
   下げています。
   また木々は屋外に日陰を作り、屋根は熱を反射する白色に塗られています。

   クリエイターたちは、このスペースが大学生や近隣の企業で働く人々の
   交流の場となることを期待しています。
   「このプロジェクトは、通りに活気を取り戻すことを目指しています」と
   ラモス氏は言っています。「また真夏には避難所として利用でき、屋外活動が
   継続できるようになります」。

   素晴らしい未来
   ラモスとアルバレスは、ラモスがセビリア大学でアルバレスの生徒だった 30 年
   以上前に出会いました。

バードギール(採風塔)

   それ以来、彼らはセビーリャの涼しさを保つために協力してきました。
   1990年代には、ペルシャの風を捕らえるバードギールと呼ばれる塔から
   ヒントを得て、セビーリャの通り沿いに風洞を作りました。


   バードギールは、風を捕らえて下向きに導くための上部の開口部を備えた塔です。
   風が日干しレンガの隙間から入ると塔の中は対角線上に仕切りがあり、風の道は
   4つに分かれています。4つの面から入った風はそのまま逃げてしまうことなく、
   用意された4つの道で下に向かい、貯水槽を通って冷たい風となって送風口から
   家の中に入るようになっています。

   彼らはこのように、しばしば他の国々、特に何世紀にもわたって猛暑に対処
   してきた国々の知恵から解決策を見つけてきているのだそうです。

   たとえば、現代のモロッコの建物は、自然光を取り入れながら冷却効果を
   最大限に高める北向きの大きな窓と南向きの小さな窓を含むように設計
   されています。米国のロサンゼルスとインドのアーメダバードでは、太陽光を
   最大98.1%反射し、紫外線を吸収する新しいタイプの白い塗料を使用しており、
   都市の暑さに対抗し、エネルギー消費を削減するのに役立っています。
   白い反射塗料は、モロッコとギリシャで何世紀にもわたって使用されており、
   有名な都市の1つが「カサブランカ」(白い家)ですね。

   「アラブ世界がそれをしたのは、彼らには… 移動するか死ぬか、建物を
   冷やす何かを見つけるか、どちらかが必要だったからです。そして彼らは
   建物を冷やす方法を見つけました」とアルバレスは言っています。
   
   セビリアでの取り組みは、数千年前に建設されたシステムを現代風に再考
   したものです。

ザラックのカナート

   イラン当局は近年、ユネスコの世界遺産となったザラック(Zarch )にある
   約3000年前に建設されたとされる世界最長・最古のカナートの復元を目指
   しています。

   大量の電力を消費するエアコンとは違い、費用はかからず二酸化炭素も排出
   しないカナートと採風塔の換気設備が、近い将来世界中で導入されるように
   なるかもしれませんね。

  

2024年8月6日火曜日

思い出巡りのニジェール&マリ出張!(カーボヴェルデもおまけ。)  朋子さんのブログから

   
   またご無沙汰してしまいましたが、前回書いたエチオピア以来、
   4月は懐かしのニジェールとマリに出張に行ってきました!


   ご存知の通り、ニジェールは2020年の1月以来、そしてマリはこの
   ブログを始める前の2003年から2005年に赴任していた国。
   なので、行く前から懐かしさでワクワク♫ 一方、私が離れている
   間にサヘル三国の政情は急変し、ブルキナを含む三国共クーデター
   で軍が政権を握り、反欧米感情が漂っているので、(私は欧米人
   じゃないけど)どうなる事かとやや不安な気持ちも抱きつついざ出陣。
   まず着いたニジェールでは、久々に46度の猛暑!「あ~、サヘルの
   暑さを忘れていた~!」と反省。空港から町に出ると、この4年間で
   以前はなかったモダンなコンドミニアムが数軒建っていたり、ちょっと
   発展の兆しはあった一方、去年7月のクーデターの後フランス大使を
   追い出したせいもあり制裁を受け援助や隣国との国交が閉鎖された為、
   ホテルやレストランもしばらくお客が途絶えて閑古鳥が鳴いていたそうな。
   でも出張前に想像していた程はひどくなくて、ちょっと安心。


   一方、4年振りに再会した前チームメンバー達は半分同じ面子で、   
   「トモコ、お帰り~!」と嬉しそうに(?)迎えてくれました!
   また教育省や教育分野のパートナー会議でも数人は私のことを覚えていて
   くれて、胸一杯!政府の元お偉いさんもわざわざ私が滞在するホテルまで
   昼も夜も訪ねて来てくれ、ありがたや~。
   その1人は、「今は軍が物価をコントロールしているから表面上は平穏が維持
   されているけど、今後物資が希少になるに連れ、どうなるか分からない」と
   今後の国政を懸念していましたが…。

   ニジェールの次は1日掛けてトーゴとベナンを経由して、18年振りのマリ。
   飛行機から降りると44度の気温に他の乗客は「うわ、暑い!」とぼやく中、
   46度のニジェールから来た私は「あ~良かった、ニアメよりもちょっと
   涼しいわ」と安心したりして。
   当時私が住んでいた頃のマリはまだ平和で、モプティやドゴンや
   ティンブクトゥに1人でバックパックに行ったりしたな~。
   あの頃は私も若くて冒険心旺盛だったな~。


   今はそんな元気消え果てちゃったな~、などと回顧しつつ、町を眺めると
   当時からあるレストランはモダンにリフォームされ、道路にはブルキナ
   みたいにバイクがひしめき合い、でも懐かしのニジェール川とそれを望む
   ホテルはまだ昔通り。


   そして出張中に参加した会議では、「え!2005年にUNESCOにいたトモコ
   じゃないか!!」とこの長い年月を超えて私を覚えていてくれた人もいて、
   超感動!!他にもニジェール時代の知人が今はマリで働いていたりで、
   西アフリカの教育界は狭すぎ。
   そしてマリ出張での一番のハイライトが、当時マリで担当していた
   プロジェクトの弟分的な存在と一緒に働いた仲間との18年振りの再会!
   2人共見かけ年は取ったけど、性格は以前と全く変わってなくて、昔みたい
   にからかい合い冗談言い合う関係に心和ませて貰いました~♫
   ちなみにマリもクーデター後は経済的に厳しい状態らしく、実際私が滞在中
   も殆ど停電していましたが、それでも一般市民でも
   「欧米から搾取されるよりマシ」と思っている人が多いそう。
   辛くても「真の独立」を目指す姿勢は、あまり国際メディアで報道されていず、
   なるほど~と思いました。

   そんなこんなで、懐かしさが詰まったニジェールとマリ出張となり、同時に
   またまた懐かしく温かい西アフリカに戻って来て良かったな~と実感できた
   機会でもありました。

Tarrafal beach in Santiago Island in Cape verde

   あ、そうだ、4月頭に休暇でカーボヴェルデにも行って来たんだった。
   出張じゃないから忘れていましたが、ジュリアのパパ側の家族と和気藹々
   してエメラルドグリーンの海が広がるビーチリゾートを一瞬ながらも
   満喫して来ました~♫ 


2024年7月21日日曜日

Terra Nova Rural Park を散策          114回トランスリンクの旅

   今月の旅は、私が朝よく歩く散歩コース(Terra Nova)に皆さんをお連れしまし
   た。
   このTerra Nova は、私がこの地に引っ越ししてきた30年前はまだ自然がそのまま
   に残った場所だったのですが、その後すぐに開発されることになり、それに関
   して相当な議論が巻き起こったことを覚えています。結局自然を半分
   (63エーカー)残すということで、開発が始められました。
   それと同時に開発しない残りの半分にも手が加えられ、Community Garden や
   遊園地が出来ると共に、多くの鳥や生き物が住めるように工夫され、沼には橋が、
   そして鳥や虫たちが好む植物が植えられると同時にトレールも整備されてきた
   という歴史があります。

   参加者は大人8名と宗一郎くんです。

   11時にTakeya 集合。Takeya でそれぞれお弁当を買って、車で
   Terra Nova Community Garden まで。
   そこでパーキングして隣接しているSharing Farm へ。
  

   ここには大勢が憩えるように、大きなテーブルがあり、その上にはテントまで
   張られていました。
   まずはここでランチからスタート。
   このSharing Farm にはパン焼きのかまどや葡萄の棚、温室、野菜畑があり、出来
   た野菜はFood Bank に寄付されるそうです。


   こんな綺麗なお花畑もあります。
   食事をしたSharing Farm も含めてここはTerra Nova Ruaral Park の中です。


   食事が済んだ後、いよいよRural Park の中の散策です。
   畑の片隅には白と紫の釣鐘のような形をした花が沢山咲いていました。
   これは1970年にビタミンBやミネラルを多く含む健康野菜としてブームが起こり、
   日本でも沢山栽培されたコンフリ(日本名ヒレハリソウ)です。
   その後の研究で毒性が指摘されてからは見向きもされなくなったみたいですが、
   葉や根に細胞増殖作用があり、今でも傷や骨の治療に使われています。
   そして葉をお風呂に入れると、若々しい肌になる効果もあるそうですよ。

   Sharing Farm に隣接してCommunity Garden があります。
   その中にあるちかこさんの畑です。茗荷谷やズキニ、胡瓜等が’元気に育っていま
   した。


   Community Garden を抜けてnature areaに入っていくとピンクの花が咲いて
   いるハードハックの鬱蒼とした茂みが出てきます。
   これはシモツケの仲間ですが、ここにあるのはカナダ原産のハードハックです。
   繁殖力が強く、ヨーロッパでは強力な侵略植物として嫌われているとか。
   でもこのピンクの花が蜂を引き寄せ、地元の蝶がこの木に卵を産み、湿地の鳥
   が止まっているのを見ると、ここには必要な木なんだなって思いました。


   後ろに見える小さな小屋はコウモリのコンドウです。
   コウモリがRichmond に住んでいるなんてとびっくりしますが、この地域で
   絶滅危惧種である小さな茶色のコウモリを含めて6種類のコウモリが見つ
   かっているんです。でも残念ながらこのコウモリのコンドウはいまだに使われ
   ている形跡はないそうです。コウモリは夜行性で、夕刻から日没後に活動を始
   め飛び回るので、ちょっとお目にかかれそうもないですね。


   この池には季節に応じていろいろな鴨類が来ているし、つい最近まで「べんべん」
   と緑蛙が良く鳴いていました。

   橋を渡ると一面に黄色いアブラナ科の花が咲いている野原に出てきます。
   ここは数年前まで養蜂をしていた所で、後ろに見えるのが、


   ミツバチが大好きな花がいっぱい植えられているミツバチの庭です。



   ダイクに出て来ました。


   この素晴らしいベンチはCoast Salish のアーティストのSusan Point の息子
   Thomas Carnelle の作品「ワタリガラス(Ravens)」です。


   数千年の間ここにCoast Salish の人たちが定住しており、この看板には
   『彼らは決して一つの地域だけから作物を収穫したのではなく、色々な場所
   から収穫するようにしていたと同時に、そのような過去の物語を語り続けて
   います。私たちは彼らの歴史から学び、彼らの教えがどこから来たのかを
   次の世代が理解できるようにしています。

   上の写真のワタリガラスは3200ポンドもある玄武岩のベンチで、デザインの
   ワタリガラス(レイブン)は、策略にたけた鳥で、状況によって形を変えて
   行っています。英雄であり、勇敢で、Terra Nova Parkの土地 が過去200年の間
   辿って来た変化を反映して様々な形に変わっていっています』
   と書かれています。


   ここはポピーが一面に咲いている野原です。


   ここでちょっと一休み。

   この背の高い花チーゼルの種はオウゴンヒワ(Goldfinch)の好物で、秋になる
   と沢山のオウゴンヒワが種を食べに来ます。ただ種を沢山作って、在来植物を
   駆逐してしまうのが難。でも若葉は生で、またはスムージーにして食べられる
   し、根はお茶に。根には食物繊維が豊富にあるし、花が枯れたら
   ドライフラーワーにしても素敵です。


   こんなトトロに出てくるような木のトンネルが出てきます。



   木のトンネルの下を潜っていくと、


   池が出てきて、端っこに大きなビーバーダムができています。


   ビーバーダムです。


   宗くんが嬉しそうに持っているのがイネ科の多分ヤマアワ?


   この赤い実がなっているのがブラック ホーソン。鋭い棘があり、その棘を使って
   先住民の人はフィッシングの針に使用したそうです。
   この木は優れた強心作用を持つ「心臓のためのハーブ」として知られており、
   心筋を強化し、心臓の働きを高めると共に、高血圧や低血圧などの血圧を調節
   する効果もあると言われています。この赤い実も食べられますが、植物の本に
   何故かあまりお勧めではないとありました。


   皆さん歩き回って、少し疲れちゃったみたいです。


   この橋の脇に生えているこの木がサスカトゥーンベリー。
   実は青くなって、見た目ブルーベリーにそっくりになります。
   耐寒性が-40度で最北のフルーツと呼ばれていて、心臓病の人に効果があるとか。
   


   真っ赤な小さな実が沢山ついているこのナナカマドの木は、日本を含むアジア
   原産で、英語名でJapanese Rowan と呼ばれています。この果実で果実酒や
   ジャムが作れるそうですよ。


   最後は私の庭でティータイムです。


   トシさんが作ってくれたアメリカスグリ(左)とスグリのジャムをみんなで
   味わいました。このアメリカスグリは私の庭で、またスグリはトシさんの庭で
   採れたものもので、左の方がより甘く、右の方がより濃くがあったような。
   でも両方とも美味しかったです。トシさん、ありがとうございました。

   ちょっと公園の中を歩いただけで、沢山の食用植物、薬用植物があるのに
   驚きました。普段見過ごしてしまっていた植物に「秘められた健康力!」
   植物の不思議な力を教えられた旅でした。
   また歩くにはちょうど良い、曇りがちな天気で、自然に触れながら気持ちの良い
   旅をすることが出来ました。
  

   

2024年7月20日土曜日

地球温暖化「気温50度」を踏まえた都市設計 by Forbes

「気温50度」のシナリオも、熱波に備えた都市設計の必要性を専門家が警告


   熱波や高温の専門家らは、現在直面している記録的な暑さだけでなく、今後の
   熱波についても対策を立て始める必要があると警告している。    国連人間居住計画と大西洋評議会のアドリアン・アーシュト/ロックフェラー
   財団レジリエンスセンターの「最高熱波責任者」であるエレニ・ミリビリは
   インタビューで、都市部は他の地域の平均の2倍の速さで暑くなっており、
   「地球温暖化の中心点」になっていると語った。    ミリビリは、都市計画に携わる人は現在世界中で記録が塗り替えられている
   気温だけでなく、さらに暑くなる可能性のある来るべき熱波に備えた都市設計
   を始める必要があるとも指摘した。    「問題を深刻にとらえているフランスの首都パリが現在、気温50度という設定
   を含むシナリオで都市設計を練っているのは非常に示唆的だ」    「5年前にはこのような計画は考えられなかっただろうが、さらに暑くなってい
   る未来を想定した設計を今始めなければならない。というのも、もはや今後暑く
   なるかどうかわからないという話ではないからだ」とミリビリは続けた。    ミリビリのコメントは、欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動
   サービス」が新しいデータを発表した際のものだ。発表されたデータによると、
   6月の世界の気温は産業革命前の水準を1.5度上回った。これは12カ月連続だ。
   欧州の6月の平均気温は1991~2020年の平均気温を1.57度上回り、史上2番目
   (タイ)に暑い6月となった。    エンジニアリングと持続可能性のコンサルタント会社Arup(アラップ)の自然
   再興部門を率いるディマ・ゾゲイブがインタビューで語ったところによると、
   同社は人工知能(AI)とコンピュータ上の熱モデリングツールを使って世界中
   の都市の暑さの問題を研究している。    調査で英ロンドンの最も暑い地域の気温は、近隣の緑豊かな地域よりも8度も高
   いことがわかったとゾゲイブは明らかにした。    アラップはこれらのツールを用いて地区や都市規模での設計が気温にどのよう
   に影響するかも測定している。    同社の研究者がアラブ首長国連邦で調査したところ、日差しを遮る覆いや樹木、
   透水性の表面などの対策を導入した地区の気温は10度も下がることがわかった。

   最も危険なのは夜間の高温、高い死亡率や罹患率につながる

   「この研究は、遮光や緑化、オープンスペース、樹木が都市の気温を下げるの
   に大きく貢献することを如実に示している」とゾゲイブは筆者に語った。

   都市は伝統的に地理的な位置やその地域の気候条件に合わせて設計されてきた
   とミリビリは指摘する。

   コンクリートや鉄、アスファルトなど、今日建築に使われている材料の多くは、
   日中に熱を吸収し、夜ゆっくりと熱を放出する。夜間に気温が高いままなのは
   このためだとミリビリは説明する。

   そして、最も危険なのはそうした夜間の高温で、これが高い死亡率や罹患率に
   つながるという。

   ミリビリはまた、多くの都市に「自然がない」ことも、都市の気温上昇を助長
   していると指摘し、医学誌ランセットに2023年に掲載された研究にも言及した。
   この研究では、欧州の都市で樹木被覆率を30%まで高めることで、暑さに関連
   する死を3分の1減らすことができると論じた。

   「都市に緑地を増やし透水性の表面を増やすことは、暑さ対策に複数のメリット
   をもたらす」とミリビリはいう。「暑さは人命を脅かす。緑豊かな都市を作り
   始めれば、今以上に美しくて住みやすく、そして理にかなった都市になる。
   なぜなら緑豊かな公共空間では、誰もが休憩してリラックスできるからだ」

   ゾゲイブは、タンザニアのダルエスサラームでのアラップの取り組みに言及した。
   同社はデジタル技術を使って2050年までの都市の成長をモデル化し、都市の高温
   と洪水に対処するための将来の計画に自然を用いたソリューションを組み込んだ。

   このプロジェクトでは、気温を最大5度下げることができ、オリンピックで使用
   される大きさのプール300杯分の雨を土壌に蓄えることができることを実証した。

   「洪水や都市の高温、緑地といった問題は解決できる。都市を構成するあらゆる
   要素について考え、そうした要素が住みやすく、回復力のある場所づくりにどの
   ように貢献しているのかを理解する絶好の機会だ」とゾゲイブは話した。