教育チーフを務める渋谷朋子さんの書いた記事です。
渋谷朋子さん |
東京都出身。ボストン大学ジャーナリズム学学士、
オックスフォード大学比較教育学修士、
ケープタウン大学社会開発学博士。
日本で英字新聞記者を務めた後、
青年海外協力隊員としてガーナの村の学校へ。
以来20年間アフリカの教育開発に携わる。
UNCEFには2005年に教育担当官として
ブルンジ事務所に赴任して以来、
モザンビーク、ギニアビサウ、ブルキナファソ,
各事務所を経て現職に至る
サハラ砂漠に面するニジェール共和国。
2018年の人間開発指数で は世界最下位になる程
生活は厳しい上に、
近年ではボコハラムとマリの過激グループの
テロ脅威にもさらされています。
そんな中、教育分野も課題が多くなって います。
7歳から16歳の学齢児童の53%が就学していない上、
仮に就学したとしても6年生で
満足に語学と算数を習熟できたのは8%のみです。
そこで、2017年末から国連児童基金(UNCEF)と
国際協力機構(JICA) による連携が始まりました。
ボコハラムの被害を受け約25万人が
難民避難民生活を強いられている同国ディファ州において、
学校に行けなかった子どもたちを対象とした
ノンフォーマル学校14校で、
JICAが開発した算数ドリルによる学力改善手法を導入。
普通の小学校でも先生が黒板に書いたことを
ノートに書き 移しているだけの授業が多い中、
このプロジェクトの対象校では
各児童がそれぞれのレベルにあったドリルを自ら解き、
その場で採点・指導されて、
1つのレベ ルを習得した後、次に進んでいきます。
こうした取り組みの結果、
約300人の生徒の算数テストの平均正解率が
3カ月で19ポイントも上がりました。
2018年にはこのプロジェクトに
日本政府の補正予算からのご支援をいただいています。
ディファ州で避難民の子どもたちが学び続けられるよう
日本の補正予算で支援された小学校
「この試みにより、(ディファ州の)子どもたちでも
確実に学べることがわかりました。
今後対象校の数を増やし、普及していきたいです」と
ディファ州の初等教育局長、アサン・ハムザ氏は
満足そうに語ります。
同州の平均学力は国で最下位だったので、
初等教育局にとっても
子どもの学力を上げることは大きな課題でした。
そんな中、このプロジェクトは希望の光をもたらしたのです。
ニジェール・ディファ州のノンフォーマル学校で
熱心に算数ドリルに取り組む生徒たち
しかし、この結果に至るまでの道程は
容易ではありませんでした。
JICAのこの手法はニジェールの 安定している他州で
既に成果を出していましたが、
紛争被災地では予期せぬ障害に直面しました。
まずボコハラムの攻撃が未だに続くディファ州では
安全上の行動規制が多く、
予定していた出張が何度も土壇場でキャンセルされ、
はじめの教員研修の前半には担当官が立ち会えなかったほか、
モニタリングも望ましい頻度 で行えませんでした。
そこで、配布された算数ドリルが効果的に活用され、
学力改善につながるようJICAとUNCEFが
共同で打開策を模索しました。
現場スタッフと州教育局の能力が強化するように方向転換し、
同時に担当視学官と教員たちの間で
WhatsApp(日本の LINEのようなメッセージアプリ)
グループを作り、ドリルを採点・指導中に直面した疑問点を
リアルタイムで意見交換ができるなどの工夫を導入しました。
こうした粘り強く柔軟な技術協力により、
今回の成果が出たのです。
同時に、日本政府の2018年補正予算支援によって、
上記のノンフォーマル学校での
算数ドリルを使った学力改善活動に加え、
約400人の未就学青少年への職業訓練、
さらに20の村ではコミュニティーでの
子どもの保護システム作りが行われました。
ボコハラムの勧誘・攻撃の危機に
日々さらされているこの地域では、
青少年がボコハラムの活動に勧誘される
リス クを予防すると同時に、
被害を受けた子どもたちを見つけて
保護する仕組みを各村で持つことが必要だからです。
こうした取り組みの結果、
同プロジェクトの成 果が評価され、
2019年度の日本政府補正予算の成立で、
資金援助が今年2月末に決定しました。
また、JICA・UNCEF間の学力改善の
技術協力もさらに創造的に展開し、
紛争地域だけでなく低学力に苦しむ
ニジェールの一般の生徒のための
算数ドリルの普及や、ドリルをアプリ化して
子どもが楽しみながらタブレットで
学べる試みの準備も始まりました。

オックスフォード大学比較教育学修士、
ケープタウン大学社会開発学博士。
日本で英字新聞記者を務めた後、
青年海外協力隊員としてガーナの村の学校へ。
以来20年間アフリカの教育開発に携わる。
UNCEFには2005年に教育担当官として
ブルンジ事務所に赴任して以来、
モザンビーク、ギニアビサウ、ブルキナファソ,
各事務所を経て現職に至る
サハラ砂漠に面するニジェール共和国。
2018年の人間開発指数で は世界最下位になる程
生活は厳しい上に、
近年ではボコハラムとマリの過激グループの
テロ脅威にもさらされています。
そんな中、教育分野も課題が多くなって います。
7歳から16歳の学齢児童の53%が就学していない上、
仮に就学したとしても6年生で
満足に語学と算数を習熟できたのは8%のみです。
そこで、2017年末から国連児童基金(UNCEF)と
国際協力機構(JICA) による連携が始まりました。
ボコハラムの被害を受け約25万人が
難民避難民生活を強いられている同国ディファ州において、
学校に行けなかった子どもたちを対象とした
ノンフォーマル学校14校で、
JICAが開発した算数ドリルによる学力改善手法を導入。
普通の小学校でも先生が黒板に書いたことを
ノートに書き 移しているだけの授業が多い中、
このプロジェクトの対象校では
各児童がそれぞれのレベルにあったドリルを自ら解き、
その場で採点・指導されて、
1つのレベ ルを習得した後、次に進んでいきます。
こうした取り組みの結果、
約300人の生徒の算数テストの平均正解率が
3カ月で19ポイントも上がりました。
2018年にはこのプロジェクトに
日本政府の補正予算からのご支援をいただいています。
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日本の補正予算で支援された小学校
「この試みにより、(ディファ州の)子どもたちでも
確実に学べることがわかりました。
今後対象校の数を増やし、普及していきたいです」と
ディファ州の初等教育局長、アサン・ハムザ氏は
満足そうに語ります。
同州の平均学力は国で最下位だったので、
初等教育局にとっても
子どもの学力を上げることは大きな課題でした。
そんな中、このプロジェクトは希望の光をもたらしたのです。

ニジェール・ディファ州のノンフォーマル学校で
熱心に算数ドリルに取り組む生徒たち
しかし、この結果に至るまでの道程は
容易ではありませんでした。
JICAのこの手法はニジェールの 安定している他州で
既に成果を出していましたが、
紛争被災地では予期せぬ障害に直面しました。
まずボコハラムの攻撃が未だに続くディファ州では
安全上の行動規制が多く、
予定していた出張が何度も土壇場でキャンセルされ、
はじめの教員研修の前半には担当官が立ち会えなかったほか、
モニタリングも望ましい頻度 で行えませんでした。
そこで、配布された算数ドリルが効果的に活用され、
学力改善につながるようJICAとUNCEFが
共同で打開策を模索しました。
現場スタッフと州教育局の能力が強化するように方向転換し、
同時に担当視学官と教員たちの間で
WhatsApp(日本の LINEのようなメッセージアプリ)
グループを作り、ドリルを採点・指導中に直面した疑問点を
リアルタイムで意見交換ができるなどの工夫を導入しました。
こうした粘り強く柔軟な技術協力により、
今回の成果が出たのです。
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子どもたちが使っている算数ドリル |
同時に、日本政府の2018年補正予算支援によって、
上記のノンフォーマル学校での
算数ドリルを使った学力改善活動に加え、
約400人の未就学青少年への職業訓練、
さらに20の村ではコミュニティーでの
子どもの保護システム作りが行われました。
ボコハラムの勧誘・攻撃の危機に
日々さらされているこの地域では、
青少年がボコハラムの活動に勧誘される
リス クを予防すると同時に、
被害を受けた子どもたちを見つけて
保護する仕組みを各村で持つことが必要だからです。
こうした取り組みの結果、
同プロジェクトの成 果が評価され、
2019年度の日本政府補正予算の成立で、
資金援助が今年2月末に決定しました。
また、JICA・UNCEF間の学力改善の
技術協力もさらに創造的に展開し、
紛争地域だけでなく低学力に苦しむ
ニジェールの一般の生徒のための
算数ドリルの普及や、ドリルをアプリ化して
子どもが楽しみながらタブレットで
学べる試みの準備も始まりました。

学校に通えない青少年たちが
手に職を付けられるよう、
日本の補正予算で職業コースをディファ州で実施。
写真はパン作りのコース
このように、日本の財政・技術支援は
UNCEFとの効果的な連携を通し、
地球の反対側・ニジェールの紛争被災地においても、
将来の平和へ希望の光をともしています。
手に職を付けられるよう、
日本の補正予算で職業コースをディファ州で実施。
写真はパン作りのコース
このように、日本の財政・技術支援は
UNCEFとの効果的な連携を通し、
地球の反対側・ニジェールの紛争被災地においても、
将来の平和へ希望の光をともしています。
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学校視察の際には校長先生や先生、生徒たちだけでなく コミュニティ、住民とも学校の状況について 意見を聞くことが大切だ。 |
このような連携に携わっている私も、
はじめは青年海外協力隊員として
1999年にガーナの村に赴任しました。
以来気付けば20年間アフリカの教育開発に携わり、
ニジェールは 赴任7カ国目です。
この間、猛暑に見舞われて断水・停電が何週間にも及んだり、
クーデターやテロなどで外出禁止の日々が続いたりすると、
「もうそろそろ日 本に帰ろうか」と
くじけそうになる時も何度かありました。
でも、生まれて初めて教材を手にして踊って喜ぶ子どもたちや、
かやぶきの教室でも目を輝かせて嬉 しそうに
学んでいる生徒たちを見たり、
教育省の職員に「トモコと一緒に働けて良かったよ」
と言ってもらえると、
「この仕事に就けて、やっぱり私は幸せだ」 と改めて思えます。
初めてもらったUNCEFの教材を嬉しそうに見せてくれる
ジンデール州の子どもたち
日本は特に資源に恵まれていないにも関わらず、
戦後のゼロに近い状態から国民の教育を通して
急成長を遂げた国として、
私が出会った多数のアフリカの 人々から尊敬されています。
そんな日本からの教育支援への関心と期待は高く、
その期待に応えるべく成果を出さなくては
いけないというプレッシャーも感じま す。
私も微力ながら、アフリカの開発に
今後も一日本人として貢献していかれればと思います。
はじめは青年海外協力隊員として
1999年にガーナの村に赴任しました。
以来気付けば20年間アフリカの教育開発に携わり、
ニジェールは 赴任7カ国目です。
この間、猛暑に見舞われて断水・停電が何週間にも及んだり、
クーデターやテロなどで外出禁止の日々が続いたりすると、
「もうそろそろ日 本に帰ろうか」と
くじけそうになる時も何度かありました。
でも、生まれて初めて教材を手にして踊って喜ぶ子どもたちや、
かやぶきの教室でも目を輝かせて嬉 しそうに
学んでいる生徒たちを見たり、
教育省の職員に「トモコと一緒に働けて良かったよ」
と言ってもらえると、
「この仕事に就けて、やっぱり私は幸せだ」 と改めて思えます。

ジンデール州の子どもたち
日本は特に資源に恵まれていないにも関わらず、
戦後のゼロに近い状態から国民の教育を通して
急成長を遂げた国として、
私が出会った多数のアフリカの 人々から尊敬されています。
そんな日本からの教育支援への関心と期待は高く、
その期待に応えるべく成果を出さなくては
いけないというプレッシャーも感じま す。
私も微力ながら、アフリカの開発に
今後も一日本人として貢献していかれればと思います。
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