2019年12月31日火曜日

♪朋子さんの活躍 国連広報センターブログより♪

     国連児童基金(UNCEF)ニジェール事務所で
     教育チーフを務める渋谷朋子さんの書いた記事です。
     
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渋谷朋子さん
     
     東京都出身。ボストン大学ジャーナリズム学学士、
      オックスフォード大学比較教育学修士、  
     ケープタウン大学社会開発学博士。
      日本で英字新聞記者を務めた後、
      青年海外協力隊員としてガーナの村の学校へ。
      以来20年間アフリカの教育開発に携わる。
      UNCEFには2005年に教育担当官として 
      ブルンジ事務所に赴任して以来、
      モザンビーク、ギニアビサウ、ブルキナファソ,
      各事務所を経て現職に至る
 

     サハラ砂漠に面するニジェール共和国
     2018年の人間開発指数で は世界最下位になる程
     生活は厳しい上に、
     近年ではボコハラムとマリの過激グループの
     テロ脅威にもさらされています。
     そんな中、教育分野も課題が多くなって います。
     7歳から16歳の学齢児童の53%が就学していない上、
     仮に就学したとしても6年生で
     満足に語学と算数を習熟できたのは8%のみです。


     そこで、2017年末から国連児童基金(UNCEF)と
     国際協力機構(JICA) による連携が始まりました。
     ボコハラムの被害を受け約25万人が
     難民避難民生活を強いられている同国ディファ州において、
     学校に行けなかった子どもたちを対象とした
     ノンフォーマル学校14校で、
     JICAが開発した算数ドリルによる学力改善手法を導入。
     普通の小学校でも先生が黒板に書いたことを
     ノートに書き 移しているだけの授業が多い中、
     このプロジェクトの対象校では
     各児童がそれぞれのレベルにあったドリルを自ら解き、
     その場で採点・指導されて、
     1つのレベ ルを習得した後、次に進んでいきます。
     こうした取り組みの結果、
     約300人の生徒の算数テストの平均正解率が
     3カ月で19ポイントも上がりました。
      2018年にはこのプロジェクトに
     日本政府の補正予算からのご支援をいただいています。



     ディファ州で避難民の子どもたちが学び続けられるよう
     日本の補正予算で支援された小学校

     「この試みにより、(ディファ州の)子どもたちでも
     確実に学べることがわかりました。
     今後対象校の数を増やし、普及していきたいです」と
     ディファ州の初等教育局長、アサン・ハムザ氏は
     満足そうに語ります。
     同州の平均学力は国で最下位だったので、
     初等教育局にとっても
     子どもの学力を上げることは大きな課題でした。
     そんな中、このプロジェクトは希望の光をもたらしたのです。

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     ニジェール・ディファ州のノンフォーマル学校で
     熱心に算数ドリルに取り組む生徒たち

     しかし、この結果に至るまでの道程は
     容易ではありませんでした。
     JICAのこの手法はニジェールの 安定している他州で
     既に成果を出していましたが、
     紛争被災地では予期せぬ障害に直面しました。
     まずボコハラムの攻撃が未だに続くディファ州では
     安全上の行動規制が多く、
     予定していた出張が何度も土壇場でキャンセルされ、
     はじめの教員研修の前半には担当官が立ち会えなかったほか、
     モニタリングも望ましい頻度 で行えませんでした。
     そこで、配布された算数ドリルが効果的に活用され、
     学力改善につながるようJICAとUNCEFが
     共同で打開策を模索しました。

     現場スタッフと州教育局の能力が強化するように方向転換し、
     同時に担当視学官と教員たちの間で
     WhatsApp(日本の LINEのようなメッセージアプリ)
     グループを作り、ドリルを採点・指導中に直面した疑問点を
     リアルタイムで意見交換ができるなどの工夫を導入しました。
     こうした粘り強く柔軟な技術協力により、
     今回の成果が出たのです。
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子どもたちが使っている算数ドリル
 

     同時に、日本政府の2018年補正予算支援によって、
     上記のノンフォーマル学校での
     算数ドリルを使った学力改善活動に加え、
     約400人の未就学青少年への職業訓練、
     さらに20の村ではコミュニティーでの
     子どもの保護システム作りが行われました。

     ボコハラムの勧誘・攻撃の危機に
     日々さらされているこの地域では、
     青少年がボコハラムの活動に勧誘される
     リス クを予防すると同時に、
     被害を受けた子どもたちを見つけて
     保護する仕組みを各村で持つことが必要だからです。

     こうした取り組みの結果、
     同プロジェクトの成 果が評価され、
     2019年度の日本政府補正予算の成立で、
      資金援助が今年2月末に決定しました。

     また、JICA・UNCEF間の学力改善の
     技術協力もさらに創造的に展開し、
     紛争地域だけでなく低学力に苦しむ
     ニジェールの一般の生徒のための
     算数ドリルの普及や、ドリルをアプリ化して
     子どもが楽しみながらタブレットで
     学べる試みの準備も始まりました。
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     学校に通えない青少年たちが
     手に職を付けられるよう、
     日本の補正予算で職業コースをディファ州で実施。
     写真はパン作りのコース

     このように、日本の財政・技術支援は
     UNCEFとの効果的な連携を通し、
     地球の反対側・ニジェールの紛争被災地においても、
     将来の平和へ希望の光をともしています。
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学校視察の際には校長先生や先生、生徒たちだけでなく
       コミュニティ、住民とも学校の状況について
       意見を聞くことが大切だ。

     このような連携に携わっている私も、
     はじめは青年海外協力隊員として
     1999年にガーナの村に赴任しました。
     以来気付けば20年間アフリカの教育開発に携わり、
     ニジェールは 赴任7カ国目です。

     この間、猛暑に見舞われて断水・停電が何週間にも及んだり、
     クーデターやテロなどで外出禁止の日々が続いたりすると、
     「もうそろそろ日 本に帰ろうか」と
     くじけそうになる時も何度かありました。
     でも、生まれて初めて教材を手にして踊って喜ぶ子どもたちや、
     かやぶきの教室でも目を輝かせて嬉 しそうに
     学んでいる生徒たちを見たり、
     教育省の職員に「トモコと一緒に働けて良かったよ」
     と言ってもらえると、
     「この仕事に就けて、やっぱり私は幸せだ」 と改めて思えます。
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     初めてもらったUNCEFの教材を嬉しそうに見せてくれる
     ジンデール州の子どもたち

 
     日本は特に資源に恵まれていないにも関わらず、
     戦後のゼロに近い状態から国民の教育を通して
     急成長を遂げた国として、
     私が出会った多数のアフリカの 人々から尊敬されています。
     そんな日本からの教育支援への関心と期待は高く、
     その期待に応えるべく成果を出さなくては
     いけないというプレッシャーも感じま す。
     私も微力ながら、アフリカの開発に
     今後も一日本人として貢献していかれればと思います。


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