2016年9月1日木曜日

♡国際アルビニズム啓発デーが作られた理由♡

                    National Geographic から記事抜粋

     毎年6月13日に国連が制定。止まらないアルビノへの暴力と差別。
     

      タンザニアのカバンガ保護センターで同じ疾患を持つ子供たちと共同
     生活 を送るアルビノの少年。この施設は2008年にアルビノ殺害事
     件が頻発したことから開設された。ここに暮らす住民の3人に1人が
     アルビノだ。

     2015年6月13日は国連が制定した初めての「国際アルビニズム
     啓発デー」となった。そのきっかけとなったのは、40年前、アルビ
     ニズム(先天性白皮症。その患者は「アルビノ」と呼ばれる)のカナ
     ダ人の少年ピーター ・アッシュが弱視や色素の薄い肌、白い髪などを
     理由にいじめにあったことだった。

     嘲笑と暴力に苦しむ日々を生き延びたアッシュ氏は数十年後、世界に
     は不幸にもアルビノへの偏見が原因で命を落とす子供達がいることを
     知る。サハラ以南のアフリカでは、アルビノはゼルゼル(「無」の
     意)と呼ばれる霊体とされ、愚鈍、あるいは邪悪なものと考えられて
     いる。アルビノを人間以上の存在とあがめる者もいれば、逆に人間以
     下 と蔑む者もいる。

     アルビノの身体を富、豊饒、選挙の勝利など、幸運をもたらす秘薬の
     材料として欲しがる呪術医もいる。各国の赤十字社をとりまとめるス
     イスに拠点のある「国際赤十字 ・赤新月社連名(IFRC)によると、ア
     ルビノの腕には4000ドル、全身(四肢、生殖器、耳、舌、鼻)で
     あれば7万5000ドルもの値がつくこともあるそうだ。

     アフリカを初めて訪れた際、両手両足を切断され、喉を切り裂かれ舌
     を抜かれた6歳の女の子の家族に アッシュ氏はタンザニアで出会った。
     何か自分に出来ることがあるはずだと考えた彼はその後、不動産投資
     家からアルビノに関する啓蒙を行う活動家に転身し、国連に働きかけ
     て「国際アルビニズム啓発デー」の制定 に尽力した。



     カバンガ 保護センターで暮らす姉妹が髪を結い合う。報道によると
     タンザニアでは過去5年間で60人以上のアルビノが殺されており、ア
     ルビノたちは「つねに追われているような気持ち」で暮らしている。

     選挙のたびに被害者が増加

     アルビニズムがもっとも多く発生し、もっとも恐れられている地域
     はサハラ以南のアフリカだ。タンザニアでは1400人に1人がアルビノ
     として生まれてくる。

     北アフリカやヨーロッパでは、その割合は2万人に1人とぐっと少な
     くなる。両親とも肌や髪の色素がごく普通だとしても、それぞれが
     アルビノの劣性遺伝子 を持っていれば、生まれてくる子供はアルビ
     ノになりうる。アルビノは視力が弱く、皮膚がんになるリスクが高
     いが、知性や能力が劣ることはない。

     アッシュ氏が設立したNPO「アンダー・ザ・セイム・サン(Under
     the Same Sun)」によると、サハラ以南の25カ国では過去15年間に
     少なくとも378人(うち3人に2人は子供)のアルビノが殺されるか、
     手足を切り取られるかしており、そのうち約半数はタンザニアで起
     きている。

     「選挙の時期が来るたびに、アルビノを狙った殺人が増加します」
     とアッシュ氏は言う。タンザニア政府は今月、呪術に頼らないよう
     政治家に警告した。またアルビノの女性と性交渉を持つとエイズが
     治るという迷信を信じる男たちによるレイプ事件も頻発している。

     アルビノに対する暴力事件に苦慮するタンザニア政府は2008年、
     アルビノの子供たちを集め、もともと視覚障害者などを受け入れら
     れる9つの施設で学校 教育を行うことを決めた(アルビノは視覚障
     害を伴うことが多い)。上の写真は、そうした施設の1つ「カバン
     ガ保護センター」で撮影されたものだ。


     嵐が近づく中、皿を手に食堂へ向かう子供。センターの子供たちは
     安全と引き換えに、家族と遠く離れて暮らすことを余儀なくされる。

     「つねに警戒態勢で移動します」

     「アンダー・ザ・セイム・サン」によると、こうしたアルビノ専用の
     学校は定員オーバーの状態であり、なおかつ、有用ではないという。
     彼らは代わりに、幼稚 園から大学まで、アルビニズムに理解のある
     職員がいる私立の学校に320人のアルビノの子供たちを通わせる活動
     を支援している。こうした子供たちが社会で 活躍できるよう育成し、
     アルビノに対する見方を変える役割を果たせるようにするのが目的だ。

     「我々が支援した子供たちの中には、首相官邸で働く女性経済学者が
     いますし、大手銀行の行員や、教師になった子もいます」

     「国際アルビニズム啓発デー」のためにタンザニアに滞在している間、
     アッシュ氏は身の回りの警戒を怠らなかった。彼はタンザニアの新聞
     やテレビに頻繁に登 場し、アルビノ襲撃に対する政府の甘い対応につ
     いて厳しい意見を述べてきたため、「移動するときはつねに身の安全
     に気を配る」ことを忘れない。

     中国やインドなど他国の地方でも、アルビノの子供は不幸をもたらす
     として孤児院に入れられたり、街頭で物乞いをさせられたりすること
     が多い。インドでは 先月、小学校1年生のある教師がアルビノの少女
     の母親に向かって、少女をもう学校に来させないようにと言ったとい
     う。「他の子の親から、彼女は白すぎるの で自分の子供たちと一緒に
     勉強してほしくないという要望があった」というのが教師の言い分だ。

     アッシュ氏の兄のポールが生まれたとき、病院の職員は単に「お子さ
     んは金髪ですね」と言っただけだったそうだ。やがて母親がポールの
     視力が弱いことに気付き、そこではじめてアルビノと診断された。

     まもなく50歳になるが、いまだにアルビニズムについて専門知識をも
     たない医療関係者に出くわすことがあるとアッシュ氏は言う。
     「実際にアルビノに会ったことがある人はほとんどいないのです」


2 件のコメント:

  1. さとみさん

    たぶんチャリティランチの方々の中でもこのアフリカの白子
    の現実についての認識ある方はあまりいなかったと思います。
    日本語での記事をアップロードして下さってありがとう。
    皆さん サイトを興味深く読んで下さっていることでしょう.
    私は英語の記事でずっと前に読みましたが、さとみさんに日
    本語での記事を載せて頂いて再度この白子問題に対しての認
    識を深めることができました。
    ありがとう。

    そして例の40年前の白子の少年、 Mr. Peter Ashはこの
    Surrey市のビジネスマンでした。
    一時,2年ほど前に新聞でも彼のことが良く載っていました。 
    たぶんそこでアフリカの白子のドキュメンタリー映画があると
    言うことを知って観に行ったと思います。

    悦子

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  2. 悦子さん

    白子の問題は迷信という形でアフリカの人々の心に住み着いてい
    るので、それを払拭するには教育と重い厳罰しかないでしょうね。
    私はアッシュさんがサレーに住んでいるなんて知りませんでした。
    白子の人達の悲しいニュースは時々目にして胸を痛めていたので
    すが、どうすることも出来ず歯痒い思いをしていました。
    まさか私たちのすぐ側でその運動をしている人がいるなんて……
    そのうえ今回縁があってたった一人ですけど、差別に苦しんでい
    る若者の手助けが出来る機会を与えられて嬉しいですね。

    さとみ

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